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ソフトバンクの買収で話題になったARMが属する半導体業界の今

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ソフトバンクが英ARMを買収するというニュースに驚いた方は多いと思います。少し興味を持ったので、今の半導体業界はどのような状況なのか調べてみました。結果は、日本の電機大手が強かった頃と比べると様変わりの状況でした。

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半導体の市場規模は上位20社で26兆円を超える

上の表はIC Insights社が発表した2015年の売上トップ20の会社一覧です。少し分かりにくいのですが、2014年と2015年のデータが掲載され、2015年の売上(予測値)でランク付けされています。

例えばトップのインテルでは、2014年の売上は514億ドル、2015年が503億ドルです。大まかな換算ですが、日本円だと5兆円を超える売上を誇っていることが分かります。

トップ5のうちインテルやサムソンはそれなりに有名な会社ですが、それ以外の会社はあまり聞いたことがないかもしれません。しかしながら、TSMCやQualcommといった会社が売上のトップ近辺にあることは、昨今の半導体業界の動向を示す特徴的なことだと思います。

[参考]かつての半導体業界の状況

この業界はかつては日本企業の独壇場で、下の表にあるように、例えば1990年にはNEC、東芝、日立がトップ3で他の多くの日本企業もトップ10に名を連ねていました。今や隔世の感がありますね。

ここ30年間の半導体売上トップ10 (出展: IC Insights社)

ファブレスとファウンドリの台頭

冒頭に挙げた表で特筆すべきは、ファブレス(Fabless)およびファウンドリ(Foundry)と呼ばれる会社が多く現れていることです。例えば、5位のQualcommや9位のBroadcomがファブレス、3位のTSMC、17位のGlobalFoundriesがファウンドリです。

ファブレス

ファブレスとは、自社で生産設備を保有せず、生産を外部に委託して製品提供を行っている会社を指します。この形態の企業は、特に半導体業界に限ったものではなく、様々な業種で見られます。半導体業界のファブレス企業では、自社ブランドのチップ設計を行い、その設計図を外部生産会社に渡して製造を委託することで事業を行っています。

ファウンドリ

一方、ファブレスなどから生産を受託する会社をファウンドリと呼びます。この名称は半導体業界だけで使われているもので、電子部品であれば同様な形態の会社をEMS(Electronic Manufacturing Service)と呼んでいます。EMSとしてはAppleからiPhoneの生産を受託している鴻海(ホンハイ)が有名ですね。

ファブレス、ファウンドリという事業形態は、生産設備に莫大な投資が必要な半導体業界では特に最近主流になっています。このことは、上で示した過去30年の表からも読み取れます。

なお、サムソンもAppleのiPhone向けチップの製造を受託しているので、ファウンドリの面を持つ会社です。さらにインテルも最近、自社ブランドのATOMをあきらめ、ARMアーキテクチャのチップを製造するといわれており、ファウンドリの事業に乗り出しているとも言えそうです。

TSMCは半導体業界の鴻海(ホンハイ)

先ほども述べましたが、ランキングの3位にはTSMCというファウンドリが入っています。名前にはなじみがないかも知れませんが、2015年度の売上が2.5兆円にもなっていて、半導体業界のビッグスリーの一角を占める会社です。

TSMCの名前の由来はTaiwan Semiconductor Manufacturing Company、直訳すると「台湾半導体製造会社」となります。まさに名前そのままの会社ですが、設立は1987年で今や世界最大のファウンドリとなっている会社です。この時代は日本の半導体メーカーが、自社設計、自社製造という垂直統合モデルで絶頂期にあった頃ですので、その先見の明には驚かされます。

2015年のTSMCの業績

上の表はTSMCのサイトにある2015年の業績報告書から抜粋したものです。赤枠で示したように、売上は257億ドル、純利益が92.4億ドルとなっていました。純利益率を計算すると36%にもなりますが、巨大な設備投資が必要な装置産業にあってこの数値は驚異的です。2015年には設備投資を81億ドル行なったそうです。日本円に換算して考えると、一年間に8000億円もの設備投資を行なった上に、純利益が9000億円もある会社ということになります。さらに、2016年には100億ドル(およそ1兆円)もの投資を予定しているそうです。

ちなみに、この利益の源泉は、AppleのiPhoneやiPadに使われるチップを製造しているからということをご存じの方は多いと思います。AppleはiPhoneの製造を鴻海(ホンハイ)に、iPhoneに使われるチップの製造をTSMCに委託しているわけで、TSMCは半導体業界における鴻海のような存在というわけです。

なお、AppleはTSMCやサムソンに自社チップの製造を委託しているので、ファブレスの会社になります。ただし、冒頭のランキングにはファウンドリの企業としてTSMCが掲載されているので、逆にAppleは載っていません。(両方載せると二重でカウントしてしまいますね)

ARMは利益率が驚くほど高い

さて、ソフトバンクが買収したことで話題になったARMですが、この業界に非常に影響力がある割には売上の上位には出てきません。

2015年のARMの業績

上の表はARMのサイト(現在はリンク切れ、キャッシュで確認できます)に掲載されていた2015年の決算内容です。赤枠で示したように、売上は1億4,886万ドル(約1,500億円)で、他の半導体ジャイアントと比べると規模は小さいことが分かります。

しかしながら驚くべきはその営業利益率で、2015年は51.6%にもなっています。この数字は2014年も50%を超えており、インテルの26.1%(2015年)と比較しても非常に高い値となっています。(インテルの数値も、日本のメーカー各社に比べるとべらぼうに高いのは事実ですが。)

iPhoneを含め、今や携帯電話のチップアーキテクチャのほとんどがARMアーキテクチャになっているように、ARMがすごい理由はこの利益率を生み出すビジネスモデルにあることが覗えます。

なお、このARM社のチップですが、かつてはNECが戦略的提携を結んでいて(2003年のことです)、並列マルチプロセッサ処理技術の提供をしています。この提携もひとつの要因となって、携帯電話向けプロセッサとしての地位が確固になったと言われています。当時、NECの携帯電話は「Nのケータイ」と言われて人気でしたからね。日本メーカーの技術も捨てたもんではないのです。

まとめ

今の半導体業界は、ファウンドリとファブレスが一大勢力を占めて、以前とは様変わりしているというお話しでした。1位と2位のインテル、サムソンでさえファウンドリ(と同等な形態の)事業に進出していることから、この傾向はますます顕著になって行くものと思われます。

以上、何かの参考になれば幸いです。

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