3月12日から15日まで日本に滞在し、安倍首相や天皇陛下とも会談するそうです。昨年9月にはムハンマド副皇太子も来日しており、日本重視の姿勢を強めています。その背景には何があるのでしょうか?
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国王の来日は46年ぶり
サウジアラビアの国王が来日するのは、1971年のファイサル国王以来46年ぶりということ。国王は1ヶ月にも及ぶアジア歴訪の途中で、来日前にはマレーシアやインドネシアを訪問、日本の次は中国も訪問するということです。
国王の訪問は久しぶりと言うことで、長年日本は石油を買ってくれるただのお客さんであり、国の成長のために共に協力するパートナーとしてはあまり見られていなかったような気もします。
しかしここに来て、サウジアラビアは日本やアジアを重視する方向に舵を切っているようです。その理由とは何なのでしょうか?
サウジアラビアという国
教育や医療費は無料、所得税も無い国
ご存知の通りサウジアラビアは世界最大の石油輸出国です。財政収入の約8割を石油に頼っているということで、石油依存症の国とも言えます。
国はオイルマネーで潤っており、教育や医療は無料、個人にかかる所得税もありません。しかしながら実態は、一部のサウジアラビア国民だけがその恩恵に預かっているだけで、国外からやってくる出稼ぎ労働者にとってはあまり環境の良い国とは言えません。
また、女性の社会進出は許されておらず、人権的にはいろいろと問題がある国です。とはいえ、石油を安定的に売ってくれる国なので、日本を始めアメリカなどからは特別に優遇されています。(見て見ぬふりをしているような感じですかね)
2011年に「アラブの春」と呼ばれたジャスミン革命が中東やアフリカで起こりました。サウジアラビア国民にも不満の種は多くあったようですが、オイルマネーを元手にした大盤振る舞いを貧困層にまで行った結果、このサウジアラビアまでは及びませんでした。
サウジアラビアが持つ強烈な危機感
そんなサウジアラビアですが、2015年に即位したサルマン国王は脱石油を掲げた改革を推し進めています。これは、今までの石油に頼る国家運営から脱却するために大胆な経済・社会改革を行おうとするものです。
これにはサウジアラビアが持つ強烈な危機感が見て取れます。
一番の理由はここ数年の原油価格の下落です。以前は1バレル100ドルを超えていた原油価格は一時期30ドル程度に下落、現在は少し持ち直しているとは言え50ドル程度の水準です。これは、原油に収入の8割を頼るサウジにとっては危機的な状況です。
さらに、国内の原油消費量の拡大により、将来的にはサウジアラビアが石油の輸入国になるかも知れないとも言われています。現在の国内消費は原油生産量の3割程度と言うことですが、人口増加による国内エネルギー消費が伸び、需要が生産量を超えてしまう状況もあり得ると言うことです。
国内消費が伸びる一方、全世界的には石油の需要が頭打ちになる「需要のピーク論」も議論されています。例えば電気自動車などの普及で石油の利用自体が減り、需要のピークが5年から15年の間には来るのではないかと言う意見もあるそうです。
こんな石油にまつわる世界的な構造変化予測がサウジアラビアに強烈な危機感を頂かせ、国全体を脱石油という改革に向かわせています。
パートナーとして重要度を増す日本
長年サウジアラビアはアメリカとの関係を最重視してきました。サウジアラビアが原油を安定的にアメリカに供給し、代わりにアメリカは中東地域の安全保障で協力するという構図です。
ところが、サウジアラビアと敵対するイランと和解を探ったオバマ政権とは関係が冷え込んでおり、次のトランプ政権についても、その保護主義的な点で原油政策が一致しない可能性があります。
このように米国一辺倒では今後良くないとサウジが考える中、日本やアジア諸国との関係強化が浮上することになったと考えられています。
昨年の9月のムハンマド副皇太子の来日では、孫さんのビジョンファンドへサウジが出資することや副皇太子が牽引するビジョン2030に対する日本の協力などが決まりました。
今回はサルマン国王本人の来日となり、前回決まったことをさらに深化させ、日本政府や経済界にとってもさらなる連携を進める良い契機になるのではないかと思われます。
おわりに
今回のサウジアラビアからの訪問団は閣僚を含め総勢1000人以上だそうです。前回のムハンマド副皇太子の時も驚きでしたが、その時は500人の随行員が飛行機13機に分乗していました。そして今回の随行員は、なんと飛行機40機で来日したそうです。
そして、国王は事前に運び込んだエスカレータ付の金色のタラップで日本に降り立ちました。
この大訪問団のために都内の高級ホテルも1200室以上が予約され、移動用のハイヤーも500台以上が確保されているそうです。都内ではサウジアラビア特需とも呼ぶべき状況になっていて、百貨店などもこの特需に期待しているそうです。
石油の将来はあまり良くないようではありますが、なんともスケールの大きなお話です。まだまだ予想を超える大金持ちの国ですね。
参考文献