WIPOが2016年の特許国際出願ランキングを発表しました。1位は中国のZTEで、Huawei、Qualcommがそれに続き、1,2トップが中国企業という結果になりました。
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発表はPCT出願のランキング
今回発表されたランキングは、特許協力条約(PCT: Patent Cooperation Treaty)に基づいてなされた国際出願のランキングです。これは、いわゆる「PCT出願」とか「PCTルートによる出願」と呼ばれている国際出願の一形態です。
PCT出願では、管轄特許庁(日本の特許庁も含む)やWIPO(世界知的所有権機関)に一つの出願を行なえば、国際出願日が確保されます。この出願日は、PCTに加盟する130ヵ国以上の国で有効になるので、多数の国で特許権を取得したい場合に有用です。
特許の国際出願では、PCTルートの他にパリルートというものもあります。これは、特許権を取得したい国に直接出願するものです。パリ条約に基づく出願ということでパリルートと呼ばれています。PCTルートと比較すると、手続きが国毎に必要なので多数の国への出願ではデメリットが多い一方、少数の国への出願では費用が安く抑えられ、権利取得も早くなります。
2016年の国際出願ランキング
出願人別ランキング
1位は中国の携帯電話メーカーのZTE(中興通訊)です。その出願件数4123件は昨年比91.3%もの増加で、昨年の3位からランクを上げました。
2位はこれも中国の通信機器メーカーHuawei(為華技術)です。出願件数は3692件、5.3%のダウンで昨年のトップの座をZTEに譲りました。
3位は携帯向け半導体メーカーのQualcommです。出願件数は2466件、1%のダウンで昨年の2位から1ランクダウンとなりました。
上位3位は昨年と同じ顔ぶれですが、すべて携帯電話に関わる会社であるところが面白いところです。ZTEとHuaweiに至っては本社の所在地も中国の深圳で同じです。
4位から10位は、三菱電機、LG電子、HP、Intel、BOE、Samsung、ソニーという結果でした。日本勢1位の三菱は28.9%増加の2053件、ソニーは20.6%増加の1655件でした。その他の会社もSamsung以外は20%から30%程度出願数を伸ばしています。
25位までに入った日本勢は、シャープ(14位)、パナソニック(15位)、オリンパス(20位)、NEC(21位)、日立(22位)、デンソー(23位)、富士フイルム(24位)、村田製作所(25位)でした。
国別ランキング
国別出願数では1位がアメリカ、2位が日本、3位が中国となりました。アメリカは39年間も1位の座を維持しています。
出願件数の伸びは、中国が+44.7%で1位、イタリア(+9.3%)、イスラエル(+9.1%)、インド(+8.3%)がそれに続きます。
一方、カナダ(-17.3%)は2年連続で下落。RIM/BlackberryやNortelの出願減少が影響しているということです。
中国は2002年から毎年2桁の率で増加しており、このままのペースが続くと2年以内にアメリカを抜くといわれています。40年ぶりのトップ交代がそれほど遠くない時期に起こるかもしれません。
大学からの出願
大学別では上位10校のうち7校がアメリカの大学で占められました。
1位のカリフォルニア大学は出願数434件で1993年から1位を維持しています。次にMIT(236件)が続き3位がハーバード大学(162件)という結果でした。
大学トップ10のうち東大が7位にランクインしており、アメリカの大学7校を除く残り2校は韓国の大学でした。日本の大学では東大の次に京大が20位にランクインしました。
おわりに
WIPOから発表されたPCT出願のランキングについてご紹介しました。中国勢の躍進が目立つ結果となっていますが、今後ますますこの傾向が強まるのではないかと思われます。
先にアメリカの特許取得ランキングについて記事にしました。興味深いのはUS特許取得ランキングでは永年1位にあるIBMの姿がPCT出願では見当たらないことです。
全世界で事業を行なっているIBMですが、どこの国で権利化をしておけば充分なのか綿密に検討した上で、あえてPCT出願を使わない戦略をとっているのかも知れません。
[参考文献]