WordMove/VCCW v3を使ってWordPressの環境をローカルにバックアップする方法を紹介します。導入の敷居は少々高いのですが、使い勝手は他の方法よりも優れています。
NASを使う方法については以下で記事にしましたが、今回は新バージョンであるVCCW v3のWordMoveをWindows環境で利用する方法です。
コンテンツ
WordMoveに必要なツールとその関係
Windows環境にWordMoveを導入する際の敷居が高い理由は、必要なツールの多さではないかと思います。関係するツールは、VirtualBox、Vagrant、VCCW、そしてWordMoveです。一度に理解しようとしてもなかなか難しいのですが、以下、一つ一つ解説します。
VirtualBox
仮想マシンをPC上で動作させるためのツールです。WordPressの環境は基本的にLinux上に構築されているので、PC上でLinux環境を動作させるために利用します。
同じ機能を持つツールにはVMwareやHyper-Vがありますが、VirtualBoxは次に説明するVagrantが無償で対応しています。
Vagrant
Vagrant は必要な機能を持った仮想マシンを定義ファイルから作ってくれるツールです。読み方は「ベイグラント」と呼ぶそうです。
通常、仮想環境を構築するには、OSのインストールから始まり、例えばWebサーバやデータベースなど、必要なツールをいちいち導入し、さらにはそれらの環境設定を行う必要があります。Vagrantはこれら一連の作業を自動化するもので、目的とする仮想化環境が簡単に作成できます。
HashiCorpという会社が配布しているので、そこからファイルを入手してインストールします。
VCCW
VCCWはWordPressの開発環境を仮想マシン上に構築したものです。実体はVagrantの定義ファイルなので、Vagrantを使って構築し、起動や終了の制御もVagrant経由で行います。VCCWを使えば、WordPressのプラグイン開発やテストなどもローカル環境で行うことができます。
VCCWのホームページから設定ファイルをダウンロードして、Vagrantの中でコマンドを実行して構築を行います。
WordMove
ようやくこの記事の主題であるWordMoveです。
WordMoveはWordPressの環境の同期を効率的に行うツールです。
WordPressの開発では、実際にWordPressが動作している本番環境とは別の開発環境で開発とテストを行い、リリース後に本番環境に移すということが通常行われます。WordMoveを使えば、本番環境と開発環境の同期が簡単に行えます。
開発用途だけでなく、本番環境をローカル環境にバックアップすることや、逆にローカル環境で書いた記事を本番環境に同期させる、ということも簡単に行えます。
この記事の目的は、まさにこのバックアップの用途でWordMoveを利用することです。
コマンドとしてのWordMoveはVCCWの中に含まれているので、個別のインストールは不要です。
4つのツールの関係
上の図は4つのツールの関係を模式的に示したものです。
WordMoveはVCCWの中にあるツールの一つ。さらに、VCCWはVirtualBoxで実現されている仮想マシンで、この仮想マシンの構築や起動、終了をVagrantを使って行います。
WordMoveは仮想マシンの中にあるので、利用するには以下の2つのステップを経ます。
- Vagrantのコマンドで仮想マシンを起動
- 起動した仮想マシンにteratermなどでログインしてWordMoveを実行
ツール群のインストール
まずはWordMoveを使うための事前準備です。以下の順番でツールをインストールして行きます。
- VirtualBoxのインストール
- Vagrantのインストール
- VCCWのインストール
VirtualBoxのインストール
VirtualBoxを配布しているOracleのページから、Windows版(上記の赤枠)をダウンロードします。ダウンロードしたファイルを実行すればインストール完了です。
Vagrantのインストール
上記Vagrantのダウンロードページから赤枠で示したWindows用ファイルをダウンロードして実行します。ファイルの拡張子はmsiとなっていました。
VCCWのインストール
インストールと書きましたが、正しくはVagrantを利用してWordPressの開発環境であるVCCWを構築することになります。
今までのステップでvagrantコマンドが実行できるようになっているので、コマンドプロンプトから以下を実行します。
vagrant box add vccw-team/xenial64
実行すると仮想マシンであるVCCWのファイルをインターネットからダウンロードします。ネットワークの状況にもよりますが、私の場合は完了するまで30分程度かかりました。
次にVCCWのホームページから環境設定ファイルをダウンロードして展開します。ファイルは以下の赤枠で示した”Donwload .zip”のアイコンからダウンロードできます。
ちょうどバージョンがv2からv3に上がったところで、今回はVCCW v3をダウンロードしました。
v3では仮想マシンのOSがubuntuになり、PHPもバージョン7になりました。また、ファイルサイズがコンパクトになった上、起動も速くなっているようです。
環境ファイルを展開したフォルダに移動して、以下のコマンドを実行します。このコマンドによりWordPress環境を含むVCCWの仮想マシンの設定と起動が行われます。
cd D:¥vccw
vagrant up
正常に起動されれば、http://192.168.33.10/もしくはhttp://vccw.dev/にアクセスすればWordPressの画面が表示されるはずです。
なお、Vagrantにはvagrant-hostsupdaterというプラグインがあるのですが、Windows環境ではこれがうまく動きません。このため、例えば vccw.devといった名前でローカルのWordPressにアクセスしたい場合は、Windowsのホストファイルをマニュアルで設定しておきます。
動作確認など
Vagrantコマンドを使って確認
VCCWの動作状況は以下のようにVagrantのコマンドを使って確認できます。
vagrant status
Current machine states:
vccw.dev running (virtualbox)
The VM is running. To stop this VM, you can run `vagrant halt` to
shut it down forcefully, or you can run `vagrant suspend` to simply
suspend the virtual machine. In either case, to restart it again,
simply run `vagrant up`.
上記のように running と表示されれば仮想マシンが動作しています。
画面にもある通り、仮想マシンの終了は halt、中断は suspend、そして起動は up となります。メッセージにはありませんが、中断からの復帰は resume です。
ローカルサイトにアクセスして確認
ローカルサイトのURLである、http://192.168.33.10/やhttp://vccw.dev/にアクセスすれば仮想マシンに加えてWordPressも動作していることを確認できます。
まだサーバーのWordPressコンテンツのバックアップはしていない状態なので、上記にアクセスすればWordPressの初期コンテンツが表示されるはずです。
なお、管理画面のアドレスは、http://192.168.33.10/wp-login.php です。IDとパスワードの初期値は両方とも「admin」です。
ssh接続で確認
さらにsshで仮想マシンにアクセスすることでも動作確認できます。
IPアドレスは上記と同じく192.168.33.10 (もしくは vccw.dev)で、IDとパスワードは両方とも「vagrant」となっています。
teratermなどのsshクライアントで接続して確認ください。うまくログインできれば正常に動作しているというわけです。
MySQLの環境
最後にMySQLのデフォルト環境を記しておきます。
- ユーザ名: wordpress もしくは root
- パスワード: wordpress
- データベース名: wordpress
sshでログインすれば、以下のmysqlコマンドでデータベースに接続できます。
mysql -u wordpress -D wordpress -p
なお、.my.cnfにユーザ名とパスワードが設定がされているため、簡単には下記でも接続可能です。
mysql -D wordpress
以上でWordMoveをWindowsで使うための環境構築は完了です。
記事が長くなったので、環境設定やWordMoveを使ってWordPressをバックアップする方法は次の設定・利用編で紹介します。