Appleが2017年度第2四半期(2017年1月~3月)の業績を発表しました。純利益は前年同期比5%の増加となる110億ドル。3ヶ月間で約1.2兆円も稼ぐ理由には何があるのでしょうか?
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自社株買いなど還元プログラムを拡大
Appleの2017年度第2四半期の業績報告の冒頭は以下の通り。
Capital Return Program Expanding to $300 Billion
これは、自社株買いなどによる株主還元プログラムを累計3000億ドルまで拡大させるというものです。目標額を50億ドル増やし、期間も1年間延長して2019年3月までとなりました。
このプログラムでアップルは自社株買いと株主への配当を引き続き行うことになります。報告書によれば、自社株購入枠は1750億ドルから2100億ドルに増加、株主配当も10.5%増やし、今期は一株あたり63セントとするということです。
市場に出回る株式数が減るので株価が上がり(理論的にはですが)かつ配当も増えるので、株主にとってはとてもメリットがあると言えます。ただ自社株買いは、株価が割高な時に実施するのはあまり得策ではないとも言われていますね。
売上および純利益は前年同期比5%増
上の表はAppleの2017年度第2四半期の損益計算書からの抜粋です。
赤枠で示した第2四半期の売上は529億ドル(約6兆円)で前年同期から5%増加。また、営業利益(緑枠)は141億ドル(約1兆6000億円)、純利益(青枠)は110億ドル(約1兆2500億円)となりました。営業利益は前年同期と同水準、純利益は5%の増加でした。
四半期ベースの増益は2015年10~12月期以来5四半期ぶりと言うことですが、営業利益を売上高で割った営業利益率は約27%と高水準を維持しています。
地域および製品別の業績
上の表は地域と製品別の第2四半期売上です。(こちらのデータはここで公開されています)
第1四半期はものが一番よく売れるというクリスマスシーズンを含むので、前期と比較すると地域別、製品別とも売上は下落しています。
地域別では中国で苦戦
地域別では赤枠で示したとおり中国本土の売上減少が目立っています。他地域の売上が上昇する中、中国は14%もの減少です。
為替相場で元安が進み、中国から香港や台湾に向かう観光客が減ったことが影響しているとのことです。また、中国で台頭してきた新興のスマホメーカーの影響も大きいと思われます。
製品別ではサービス事業が好調
製品別ではiPhoneの売上の伸びが低い一方、サービスの売上が堅調です。
iPhone
iPhoneは販売台数が減少するなか売上金額は増加しており(緑枠)、単価の高いiPhone7 Plusなどがよく売れた模様です。
販売台数は市場の予測に反して減少したと言うことですが、それでも3ヶ月間で5000万台も売れています。通常であれば大ヒット商品ですね。
売上は332億ドル、日本円にして約3.7兆円もあり、利益への貢献は依然として大きいものがあります。
サービス
サービスは前年同期比18%増の70.4億ドル(青枠)、前期と比べても2%減に留まっており、引き続き好調です。
サービスにはiTunesやAppストアによる音楽やソフトウェアの販売、さらにはクラウドサービスなどが含まれています。iPhoneやMacなど多くのデバイスが普及して、コンテンツ流通に関する一大エコシステムが築かれており、その事業も盤石と言えます。
ものを売るわけではないので原価も安く、クレディスイスの推定によればサービス事業の粗利益率は最高70%にも達するということです。即ち100円のものでも原価には30円しかかかっていないことになります。
おわりに
中国の売上が不調ではありますが、Appleの2017年度第2四半期は引き続き好調な決算だったと言えます。iPhoneの膨大な売上台数やサービスの高利益率が最終利益に貢献しています。
好調なゆえにアップルが保有する手元資金も増え続けています。2017年3月末時点でその額は2586億ドル、日本円にして約28兆円もの額です。トヨタの時価総額は日本企業ではトップとなる約20兆円ですが、この額はトヨタの全株式を買えてしまう額なのです。
現状、この潤沢な資金は自社株買いや配当に回されている状況です。ただ、投資家や株主からは、この資金を次の成長に向けた投資にどう結びつけるのか課題も突きつけられているようで、お金持ちの会社でも悩みはつきないようです。
最後に、今期のレポートによれば、2017年4月から7月となる第3四半期の売上見通しは435億ドルから455億ドル。売上予想が今期よりも低いのは、iPhoneの新製品発表前でもあることを織り込んでと思われます。
[参考記事]