サムソン電子の2016年12月期の業績が発表されました。ご存知の通り、昨年発表されたGalaxy Note7は電池関連の不具合で発売を中止、関連費用も膨らんでいました。決算への悪影響が相当あると思われましたが、何が好決算の理由だったのでしょうか。
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2016年度業績は増収増益
上の図はSamsungの発表資料に掲載されていた業績情報です。
赤枠で示されているとおり、2016年度の年間売上(連結)は202兆ウォン、営業利益は29.2兆ウォンとなっています。昨年度と比較すると売上は1%、営業利益は11%も伸びています。
資料に記載されている数字の単位が”KRW Trillion”(1兆韓国ウォン)と非常に桁が大きく分かりにくいのですが、日本円だと売上が20兆円、営業利益が2.9兆円という規模になります。
売上では28兆円(2015年度)あるトヨタ自動車には及びませんが、営業利益はほぼ同じです。表にもあるようにSamsungの営業利益率は14.5%で、トヨタ(10%)の約1.5倍の成績です。トヨタの10%という数字も高いのですが、Samsungの営業利益率はメーカーとしてはとても優秀です。
Galaxy Note7の回収や取引先への補償などで、一説では1,000億円を超える費用を計上したとも言われているのですが、2016年度は増収増益という思いがけない結果でした。
2016年度のセグメント別業績
上の表にある通り、Samsungは今回から初めてセグメント別の業績も発表しました。
左端のセグメントを示す略号はそれぞれ以下の通りです。
- CE: Consumer Electronics(家電)
- VD(CEの細目): Video Display(テレビ関連)
- IM: IT & Mobile communications(ITとモバイル)
- DS: Device Solutions(デバイス)
- DP(DSの細目): Display Panel(液晶パネル関連)
デバイスとモバイルで売上・利益の9割を占める
表のFY’16の列の赤枠で示したとおり、売上と営業利益は、それぞれ、モバイルが100兆ウォンと10.8兆ウォン、デバイスが78兆ウォンと15.9兆ウォンとなっています。これらのセグメントの合計は売上、利益ともに全体の9割を占め、この2つがSamsung電子の2大事業となっていることが分かります。
売上はモバイルの方が大きいものの、利益ではデバイス事業が1.5倍となる収益構造であることも分かります。これは2015年度も同じ傾向で、堅調なデバイス事業(特にメモリー)がSamsungの下支えとなっている訳です。
第4四半期のセグメント別業績
2016年度第4四半期に限ると、モバイルの売上はGalaxy Note7の影響で前年同期比6%減少、それに対してメモリーは39%も増加しています。売上高に換算するとメモリーの売上増加額がモバイルの売上減少額を上回り、良い補完ができています。
モバイルセグメントの数字を見ると、売上は前年からわずかに減少していますが、営業利益は10.81兆ウォンと、逆に前年(10.14兆ウォン)から7%弱増加しています。これはNote7以外の機種の出荷や利益が好調であったためで、Galaxy Note7の決算への影響は思いの外少なくなりました。
おわりに
Samsung電子の2016年度決算は、Galaxy Note7の失敗にも関わらず増収増益でした。メモリー事業が好調の他、モバイルでも他の機種の売れ行きが良く、決算への影響が低くなったという訳です。
Samsungの2大主要事業は、今後もモバイルとデバイスであることには変わりないと思われます。Samsungが示した見込では、今後はメモリーは引き続き堅調だがモバイルの成長は鈍化、また有機EL関連(デバイスセグメント)で成長が見込めると予測しています。
最後に昔話を一つ。
商社だったSamsungがかつて半導体事業に参入した頃、NECに教えを請いに来たという話があります(1970年代のことです)。李健熙氏(サムソン電子会長)の言葉によれば、当時のNECは「雲の上のような存在」だったということです。
とても信じられない事ですが、売上規模3兆円のNECをはるかに凌ぐ存在となったSamsungにもそんな時代があったのです。逆にNECはお人好しだったなぁとも思います。(後になって、さらに有機EL関連の特許も譲渡しているので、なおさらです。)
Samsungの過去の決算情報は、2016年度を含め以下のページでご覧になれます。