NECの2016年度の業績は売上高2.67兆円、営業利益418億円で、減収減益という結果になりました。売上高は前年比5.7%減、営業利益も前年比54.2%減と厳しい状況です。売上高の水準は最盛期の半分以下となり、企業体力の低下も目立ちます。
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2016年度通期の業績
上の表はNECの投資家向けページに掲載されている2016年度通期決算短信からの抜粋です。
2016年度の売上は2兆6650億円、営業利益は418億円でした。NECは1月に業績見込の大幅な下方修正を行ないましたが、売上は悪化(見込2.88兆億円)、営業利益(見込300億円)は改善となりました。
表にもあるとおり、売上は前年度から5.7%(1598億円)減、営業利益に至っては54.2%(496億円)もの減少となりました。全社で販売管理費などの削減に取り組んだものの、それ以上に売上減少による利益低下の影響が大きかったということです。この利益水準は
以前の記事に書きましたが、NECの2016年度第3四半期は営業利益がマイナス170億円でした。この3ヶ月で588億円も改善したことになりますが、非常に極端な4Q偏重の業績です。もう少し振れ幅の少ない安定的な事業結果が望まれるところです。
なお、税引前利益は680億円(前年同期比21.4%減)と高くなっていますが、これはパソコン事業を行うレノボとの合弁会社の保有持ち株を売却したことによります。保有する4万9000株の90%を約200億円でレノボに売却しています。
セグメント別の業績
セグメント別の業績を見ると、パブリック事業とテレコムキャリア事業の業績が不振です。
パブリック事業は前年度に比べて売上が356億円(4.6%)減少、また利益は113億円減少し460億円となりました。デジタル無線(消防・救急向け)の需要一巡や宇宙事業の採算性悪化などが原因です。
テレコムキャリア事業は売上が859億円(12.3%)減少、利益は271億円も減少し195億円という結果でした。国内外の通信事業者の設備投資が低調であったことや円高の影響を受けたことが理由ということです。
そんな中エンタープライズ事業は売上が59億円増加、わずか2%ではありますが唯一の増加セクターとなりました。製造業向けの事業が堅調に推移したということです。
2017年度の業績見込
2016年度の決算発表と同時に2017年度の連結業績予想も発表され、売上高は5.1%増の2.8兆円、営業利益は19.5%増の500億円となっています。
NECは2018年度の営業利益として1500億円必達とする中期計画を実行中です。消防救急無線の談合事件による指名停止の影響があるものの、上記予想では到底2018年度の目標を達成することは難しく、現中期計画の達成をあきらめてしまいました。
新たに中期計画を作り直し、2018年1月に公表するという発表もされました。新野社長の弁によれば、新たな中計では営業利益率5%を目標にするということです。
2017年度予想の数値では営業利益率はわずか1.8%。ここからどのように5%に持っていくのか、アナリストも少し厳しめの目で見ている状況だと思います。
NECの売上高と営業利益率の推移
上のグラフはNECの売上高と営業利益率の推移です。NECがホームで公表しているデータを元に1990年からの推移をグラフ化しました。(2017年度分はNECによる見込)
売上高は最盛期の半分以下
NECの売上が最高だったのは2000年の5.41兆円。翌年の2001年にも5兆円を超えていますが、この年は3000億円もの赤字を出しています。
以後ほぼ右肩下がりで売上を落とし、直近の売上は2兆円台に。最盛期の2000年度と比較すると2016年度の売上は半分以下になっています。
ちなみに富士通の2000年度売上高は同水準の5.48兆円でしたが、2016年度の売上は4.51兆円と、両者には大きな差が出ています。
5%超の営業利益率は20年以上前
一方、ここ10年の営業利益率は3年前までは回復傾向にあったものの、直近ではまた下がってしまいました。
次期中期計画で目指すという5%の営業利益率は、1990年と1995年に超えています。しかしながら、ここ約30年間で2回のみ、しかも20年以上前のことです。
NECは特に21世紀に入ってから、半導体事業や携帯電話、パソコン事業を切り離し、選択と集中を進めて来ました。当然のことながら売上高を伸ばすことは難しく、トップライン(売上)を追わず利益重視への転換を行ないました。
この転換による改善が目に見える形となっていれば、投資家や株主の評価も高まるのですが、上のグラフを見ても、結果としてはそれが見えていないように思われます。
おわりに
NECが2010年に発表した中期計画V2012では、2012年度売上高4兆円、営業利益2000億円、営業利益率5%を目指していました。
さらに2013年に発表した2015年を最終年度とする中期計画では、売上高3.2兆円、営業利益1500億円(営業利益率4.7%)を目指すとしていました。
そして今回見直しを行なうという直近の中期計画(2016年発表)では、2018年度の売上高3兆円、営業利益1500億円(営業利益率5%)を目標としていました。
売上高から利益重視への転換が中期計画にも現れているのですが、最近は一度も中計の目標が達成されていない状況です。
こういった状況が低迷する株価にも現れています。かつては株価で抜きつ抜かれつしていた富士通とも、現在は雲泥の差が付いてしまっていますね。
折しも、2017年10月1日を効力発生日とする株式併合も発表されています。
10株が1株に併合されるため、見た目の株価は10倍になり、売買単位は100株に、さらに年間配当が60円といった数字になります。ところが、実質のところ何も変わってはいません。
表面上は見た目の数字が変わるため、むしろ富士通をはじめ同業他社との差を見えにくくすることが目的じゃないかなど、うがった見方をしてしまうところです。