NECの2016年度第3四半期の業績は、売上が前年同期比1600億円減少、期末営業利益予想も70%減の大幅下方修正で業績悪化が顕著になりました。その理由は何だったのでしょうか?
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第3四半期の業績
売上と営業利益
上の表はNECの投資家向けページに掲載されていた第3四半期決算短信からの抜粋です。
2016年4月から12月までの売上は1兆8000億円、営業利益はマイナス170億円でした。
前年度同期は売上が1兆9600億円、営業利益が277億円だったので、売上は1600億円(-8.2%)、営業利益は447億円、それぞれ減りました。
事業領域別ではパブリックとテレコムが低調
セグメント別では、パブリック事業とテレコムキャリア事業の売上が、前年同期比約13%下落しています。一方、エンタープライズ事業はわずかながら増加しました。
パブリック事業は、消防・救急デジタル無線の需要一巡や、官公向けにあった大型案件の減少が影響したとのことです。また、テレコムキャリア事業は通信事業者の設備投資が低調であったことが理由です。売上減は双方とも600億円超と非常に大きなものとなっています。一方、エンタープライズ事業は、製造業向けが堅調に推移しました。
期末業績予想は下方修正
また、上の表のように、2016年度の期末業績予想も修正しています。修正後の売上は2000億円減の2兆6800億円(-6.9%)、営業利益は700億円減の300億円(-70%)で、大幅な下方修正となりました。
これは、大型案件の期ずれや失注(パブリック事業)、海外事業の伸び悩み(テレコム事業)によるものだということです。
とはいえ、年間配当は昨年と同じ額の6円を維持するということです。2015年度の有価証券報告書によれば、昨年は営業利益が約1073億円で、配当には156億円程度使っていました。今年度の予想営業利益は300億円ですが、配当がこのまま出るのかどうか見守りたいところです。
売上の進捗率は、修正後の数値を使うと第3四半期の時点で約67%です。年度の4分の3が過ぎていることを考えると遅れ気味と言えますが、NECは第4四半期に売上が集中する傾向があるようで、第4四半期に期待です。
また、営業利益率は1.1%という数字になります。先に、AppleやFacebookやSamsungなど、好調な海外企業の業績について記事にしましたが、それに比べると非常にさびしい限りです。
ちなみに、通年の営業利益率は、Samsung 14.5%、Apple 27.8%、Facebookに至っては45%にもなります。詳しくは以下の記事をご覧下さい。
業績発表はネガティブインパクトに
NECは2015年に、「AI技術を核に社会ソリューションを強化する」といったプレス発表をしていたこともあり、AI技術では進んでいるとの評価を巷では得ていたと思われます。
昨今のAIブームもあり、一歩先を行くNECの技術が業績に良い影響を与える、との評価を世の中の投資家からある程度は得ていたかもしれません。そんな中、期末業績の大幅下方修正を伴う発表が、思わぬネガティブインパクトとなったのでしょう。
翌日の株価は一時18%もダウン。終値でも東証一部全銘柄で下落率トップという状況でした。また、その後、S&Pが格付けを一段階格下げし、NECの格付けはBBB-になりました。
AI技術では日本企業の中でも先端を行く
期末業績の大幅下方修正、会社格付けの格下げと踏んだり蹴ったりの状況のNEC。しかし、2月1日の日経電子版にはこんな記事もありました。
これは、世界のAI関連特許を分析した記事ですが、NECはNTTと僅差の2位で、日本企業の中では先端的な位置にいます。さらに全体でも6位と健闘しています。とはいえその出願数550件弱は、世界一のIBM(出願数約3000件)の1/5以下です。
画像認識、音声認識・音声合成、機械翻訳など、今では古典的とすら言えるAI関連技術の研究開発をNECは長年続けてきました。特許数の多さはその伝統的蓄積に連なるもので、技術開発力では他の追従を許さない力はあると思います。実際、顔認証技術ではアメリカ国立標準技術研究所が行うコンテストで1位を連続してとっています。
とはいえ、技術はあっても、それが現状のビジネス(特に海外)になかなか活かせてない状況のように思われます。
結局、「技術は使われてなんぼ」です。それがあって初めて、顧客の信頼を得ることができ、さらに会社の業績に返ってくるものではないでしょうか。
おわりに
「NEC the WISE」という技術ブランドをNECは昨年発表しました。現状、あまり浸透しているようには思わないのですが、一連のAI関連技術群をひとまとめにした呼称で、それをもとにしたソリューション事業を提供するとしています。
すでに出入国システムや故障予知、需要予測といったソリューションに使われているとのことですが、それらの個別ソリューションに対してブランドの浸透はまだまだの様に思います。とはいえ、特に海外でブランド浸透を進めて行けば、少しは将来の明るい光が見えてくるようには思いました。